2010年 11月 30日
『虐殺器官』を読む |
11月中に読んだ本についてほとんど書く余裕がなかったので、今頃になって書く。いろいろ読んだけど、どうしても書いておきたい本だけ何冊か選んで書くことにします。
ドストエフスキーとクンデラと白土三平をまとめて読んだような、きわめて濃密で充実した読後感を覚えた。
大量虐殺が起きるところに必ず現れる謎の男ジョン・ポール。彼を追うアメリカ情報軍のクラヴィス・シェパード大尉。ジョン・ポールはいったい何のために何をしているのか。その種明かしは読んでのお楽しみですが、こういう話、言語好きにはたまりませんね。
テロと個人情報管理、核兵器、安楽死、格差社会、捕鯨など、アクチュアルで重たいテーマに真正面から挑んだ意欲作。
多くの死を背負って生きることの罪、その罪を負うことをみずから選ぶ自由、罰せられたいのに罰してくれる者のない地獄。
深刻なテーマでありながら、抜群のストーリーテリングでするする読めちゃう。なんといってもおもしろい! しかもちゃんとSF! SF版『罪と罰』みたいだ!
ナノ・コーティング迷彩(忍者っぽい)、肉でできた航空機や降下カプセルなどのSFガジェットがリアルで、それも単なる添え物でなく、きちんとテーマに関連しているところがミソ。
モンティ・パイソンやカフカの引用も、好事家読者へのサービスというだけでなく、ストーリーの中で新たにグロテスクな意味を帯びてくる。
感情を調整され、痛覚をマスキングされた特殊部隊員は、ミンチになるまで戦い続ける殺人マシンだ。こうなるともうほとんどゾンビ。人間と器械の境界線はいずこに?
これだけ筆力のある人が若くしてこの世を去ってしまったのは本当に本当に惜しい。もっともっと書いてほしかった。そして何十年か後にこの人が書くものを読んでみたかった。
↓こちらは文庫版
ドストエフスキーとクンデラと白土三平をまとめて読んだような、きわめて濃密で充実した読後感を覚えた。
大量虐殺が起きるところに必ず現れる謎の男ジョン・ポール。彼を追うアメリカ情報軍のクラヴィス・シェパード大尉。ジョン・ポールはいったい何のために何をしているのか。その種明かしは読んでのお楽しみですが、こういう話、言語好きにはたまりませんね。
テロと個人情報管理、核兵器、安楽死、格差社会、捕鯨など、アクチュアルで重たいテーマに真正面から挑んだ意欲作。
多くの死を背負って生きることの罪、その罪を負うことをみずから選ぶ自由、罰せられたいのに罰してくれる者のない地獄。
深刻なテーマでありながら、抜群のストーリーテリングでするする読めちゃう。なんといってもおもしろい! しかもちゃんとSF! SF版『罪と罰』みたいだ!
ナノ・コーティング迷彩(忍者っぽい)、肉でできた航空機や降下カプセルなどのSFガジェットがリアルで、それも単なる添え物でなく、きちんとテーマに関連しているところがミソ。
モンティ・パイソンやカフカの引用も、好事家読者へのサービスというだけでなく、ストーリーの中で新たにグロテスクな意味を帯びてくる。
感情を調整され、痛覚をマスキングされた特殊部隊員は、ミンチになるまで戦い続ける殺人マシンだ。こうなるともうほとんどゾンビ。人間と器械の境界線はいずこに?
これだけ筆力のある人が若くしてこの世を去ってしまったのは本当に本当に惜しい。もっともっと書いてほしかった。そして何十年か後にこの人が書くものを読んでみたかった。
↓こちらは文庫版
by come-and-go
| 2010-11-30 23:51
| 読む