オスカー・シンドラー琺瑯工場跡地に今年5月20日にオープンしたばかりの
MOCAK(クラクフ現代美術館 ul. Lipowa 4)へ出かける。
ザブウォチェ Zabłocie 駅ガード下のトンネル手前にミロスワフ・バウカ Mirosław Bałka の作品があった。作品タイトルの『アウシュヴィッツヴィェリチカ AUSCHWITZWIELICZKA』は、観光客が訪れる強制収容所と塩鉱の地名を合体させたもの。去年はポドグルスキ広場に設置されていて、周辺住民から苦情が出ていた。現在のこの設置場所は、収容所に送られるユダヤ人が集められた「ゲットーの英雄」広場 pl. Bohaterów Getta とザブウォチェ Zabłocie 駅とオスカー・シンドラー琺瑯工場を結ぶ直線上にあり、この作品にふさわしい。
MOCAKの外観。右端に見えるのが歴史博物館になっている旧オスカー・シンドラー琺瑯工場。
旧オスカー・シンドラー琺瑯工場の背後の黒いガラス張りの建物が新しくオープンした現代美術館。ロゴは建物の形と museum のMを表している。入場券は一般10zł、学生5zł(1zł=約30円)。
特別展『歴史の中の美術』と収蔵作品展のポスター。
『歴史の中の美術』展ではナチスや戦争をモチーフにした作品が目立った。数ある展示作品の中から印象に残ったものをいくつか。
ズビグニェフ・リベラ Zbigniew Libera の連作「ポジティヴ」より4点。有名な報道写真のパロディ。悲劇的な状況を楽しく友好的なドラマに変えている。
『住民 | Mieszkańcy | Inhabitants』2002年(連作「ポジティヴ」より)デジタルプリント。
オリジナルは強制収容所の収容者たちの写真。
『チェ―次のコマ | Che-następny kadr | Che-Next Frame』2003年(連作「ポジティヴ」より)デジタルプリント。
オリジナルは射殺されたチェ・ゲバラの写真。
『ネパール | Nepal | Nepal』2003年(連作「ポジティヴ」より)デジタルプリント。
オリジナルはナパーム弾で焼かれるヴェトナムの子供の写真。
『ブッシュの夢 | Sen Busha | Bush’s Dream』2003年(連作「ポジティヴ」より)デジタルプリント。
「これはブッシュの夢にすぎない」ポーランドの雑誌「プシェクルイ Przekrój」の表紙を模したもの。
フベルト・チェレポク Hubert Czerepok 『ハウネブ Haunebu』2008年、インスタレーション。
第2次世界大戦でドイツに勝利をもたらすはずだったUFO型軍用兵器「ハウネブ」の設計記録。ナチスはこんなものを大真面目に考えていたのか~。特撮ファン&「ムー」読者大喜び!
フベルト・チェレポク Hubert Czerepok 『ハウネブ Haunebu』2008年、インスタレーション部分。
フベルト・チェレポク Hubert Czerepok 『ハウネブ Haunebu』2008年、インスタレーション部分。
『ハウネブ Haunebu』とタデウシュ・カントル Tadeusz Kantor 『9月の敗北 | Klęska wrześniowa | September Defeat』1990年。UFOごしに眺めるカントル作品は余計に不条理性を増す。
デイマンタス・ナルケヴィチュス Deimantas Narkevičius 『Once in the XX Century』2004年、ヴィデオ。
1991年、リトアニアの首都ヴィリニュスでレーニン像が撤去された。その様子を撮影した動画を逆回しに上映。像の撤去を喜ぶ住民がここでは像の回帰を喜んでいるように見える。
アルトゥル・ジミイェフスキ Artur Żmijewski 『私たちの歌集 | Nasz śpiewnk | Our Hymn Book』2003年、ヴィデオ。
戦後イスラエルに移住したポーランド系ユダヤ人に、憶えているポーランドの歌やポーランド国家を歌ってもらう。ひとりひとりの顔と声に人生と歴史が刻まれている。
アルトゥル・ジミイェフスキ Artur Żmijewski 『私たちの歌集 | Nasz śpiewnk | Our Hymn Book』2003年、ヴィデオ。
地下の収蔵作品展より1点ご紹介。クリシュトフ・キンテラ Krištof Kintera 『The Room Full of Red』2008年。ポリウレタン製の彫刻。もう1点展示されていたキンテラの作品はもっとどろどろしていて黒くて陰湿だった。
美術館内のブックストアで自分用のおみやげにロゴ入りTシャツ 25zł とエコバッグ 6zł を購入。
中庭に展示されている琺瑯をひく前の鍋類。
中庭を挟んだb展示室ではスイスのVordemberge-Gildewart 賞応募作と、古書店内にビキニ姿の女の子を立たせて撮ったマウリツィ・ゴムリツキ Maurycy Gomulicki の写真作品『Bibliophilia』が展示されていた。
旧オスカー・シンドラー琺瑯工場の
クラクフ歴史博物館では『クラクフ占領期1939-1945』を常設展示中。こちらのレポートは
昨年7月7日付けブログ参照。